第二話
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とある田舎の畑。そこには一体のかかしが立っていました。
それはついこの間まで主人の農業を手伝っていたロボットです。
ロボットは、自動耕作機の暴走から主人を守った結果右足や各部を失い、そして自律機能にも不調をきたしました。 修理より新しいロボットを買った方が安い世の中。修理をしたとしても機能が完全に回復するという保証も無く、
主人はこれを期によりパワーが有る新しいロボットを購入する事にし、廃棄費用も掛かる旧型のロボットは
畑で「かかし」として、番人の役目をさせる事としました。

それから、ロボットは昼夜、晴天降雨問わず柱にくくられて畑の中に立っています。
そのかかしの効果は素晴らしく。最近特に知能化、狂暴化している鴉をはじめ
鳥獣類による畑への害はめっきり減りました。新しいサポートロボットも手に入れ、作業もはかどります。

そんな有る日の夕方。
主人が新しいロボットを従えて家路についていた時ふと、
その畑のかかしに目をやったところ一羽の鴉がかかしの肩に止まっていました。
「ああ、もうかかしの効果はなっちまったか、仕方がねえな・・・」
ぽつりと呟いた主人の横で控えている新しいロボットにはしかし、”彼女”等の会話が聞こえていました。

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「駄目ですよ、鴉さん。目を盗んで作物を啄ばんじゃ。その代わり、皆さんに
美味しい木の実と安心して寝られる場所を教えてあげたでしょ?」
「カァーカカカ、カー」
「人間には人間の事情が有るんですよ。マスターも皆さんが憎くて、
追い払ったりしてるんじゃ有りません。自分の生活がお有りになるから・・・」
「カァー…、カーカーー」
「え、私ですか・・・勿論、恨んではいませんよ。心配してくれて有難う、大丈夫。
本当なら捨てられる筈だった私を置いてくれているんですよ?優しいお方なんですよ・・・」
「カー、カー」・・・
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「おい、明日村役場に行って粗大ゴミの申請、出しておいてくれや」
主人は脇に控えるロボットにそう伝えました。
「カカシの役目も果たせんなら、電池の無駄だしな。それともいっそ、山の中に捨ててくっか・・・」
そう呟きながらまた家路についた主人の後を追い、ロボットは歩き出しました。
”彼女が居なくなればきっと又、畑は荒れるのだろう・・・そうしたらいずれ私がかかしにされるのかしら?
私達が思うほど、教えられたほど、ご主人様は私達を大切に思っているのかしら?
・・・本当に信頼できる相手は人間なのかしら?それとも・・・”

ロボットは降り返り、カカシを見ました。
追い払うべき敵が、唯一の仲間となっている彼女の姿を。
夕日が映し出されている、無機質な目に幾らかの感情を見せながら。



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